過食・過食嘔吐(摂食障害 / Bulimia Nervosa・BED)

「食べるのが止まらない。気づいたら何時間も食べ続けている。」
「食べた後、罪悪感で苦しくて、吐いてしまう。でも、また食べてしまう。」
「やめたいのに、やめられない。自分がおかしいのかと思う。」

意志の弱さでも、食への執着でもありません。
過食・過食嘔吐は、適切なサポートで回復が期待できる疾患です。

過食・過食嘔吐とは

摂食障害は、食べることへの強いとらわれや、食行動のコントロールの困難が特徴の疾患です。意志の力でやめられないのは、あなたの弱さではありません。

英国国民保健サービス(NHS)は、摂食障害を「食のコントロールを通じて感情や状況に対処しようとする、こころの疾患」と定義しています。そして、「適切な治療によって、ほとんどの人が回復できる」と明記しています。

なぜやめられないのか

過食は、強いストレスや不安、空虚感、孤独感などの感情を一時的に和らげる働きをします。しかし食べた後には罪悪感や自己嫌悪が強まり、それがまた次の過食を引き起こします。嘔吐も、一時的な安心感をもたらしますが、すぐに空腹感や不安が戻り、過食嘔吐の悪循環が強化されていきます。やめられないのはあなたのせいではありません。このサイクルそのものが、過食・過食嘔吐の維持メカニズムです。

出典:NHS Eating disorders overview/国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト

  
  

こんな症状ありませんか?

過食・過食嘔吐の症状は多様です。「自分は違う」と思っていても、当てはまるものがあるかもしれません。

① 過食嘔吐(神経性過食症)

  • 気づくと大量の食べ物を、止められないまま一気に食べてしまう
  • 食べている間、自分ではコントロールできない感覚がある
  • 食べた後、体重が増えることへの強い恐怖から、吐く・下剤を使うなどの行動をとってしまう
  • 過食と嘔吐を繰り返しているが、体重は正常範囲内のため、周囲には気づかれていない
  • 食べることへの罪悪感や自己嫌悪が強く、気分の落ち込みが続いている
  • 過食のために多額のお金を使ってしまう
  • 食後にトイレに立つことが習慣になっている

神経性過食症では、過食と嘔吐はどちらも人前では出ない症状のため、周囲はなかなか気づきません。自分でも「病気ではなく意志が弱いだけ」と思い、援助を求めないことが少なくありません。しかし、過食嘔吐が週1回以上続いている場合、専門家へのご相談をお勧めします。また、嘔吐が続くと歯の表面が胃酸で溶けたり、電解質異常から不整脈が生じるリスクもあります。体重が正常でも、身体への影響は深刻になることがあります。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト

 
 

② 過食のみ(過食性障害)

  • お腹がいっぱいでも、苦しくなるまで食べ続けてしまう
  • 食べるスピードが速く、気づいたら大量に食べていた
  • 一人のときに、こっそり大量に食べてしまうことがある
  • 食べた後、強い罪悪感や自己嫌悪、恥ずかしさを感じる
  • 嘔吐や下剤は使っていないが、過食が繰り返し起きていてやめられない
  • 過食のあと、長時間気分の落ち込みや自己嫌悪が続く
  • 食べることで、ストレスや不安をまぎらわせていると感じる

過食性障害は、嘔吐や下剤使用を伴わないため「太っているだけ」「意志が弱いだけ」と誤解されやすい疾患です。しかし過食性障害は、神経性過食症と同様に、コントロールを失う感覚と強い苦痛を伴う疾患であり、適切なサポートが必要です。米国精神医学会の診断基準(DSM-5)では、週1回以上の過食エピソードが3か月以上続く場合、過食性障害として治療の対象とされています。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト/NHS Eating disorders overview

 
 

③ その他の摂食障害について

摂食障害には、過食・過食嘔吐以外にも以下のような疾患があります。

神経性やせ症(拒食症)

体重や体型への強いこだわりから、食事を極度に制限する疾患です。低栄養が進むほど治療が難しくなるため、早期の対応が重要です。拒食と過食を繰り返す方も少なくありません。

回避・制限性食物摂取症(ARFID)

体重や体型への恐怖とは関係なく、食べ物の味・におい・食感への強い嫌悪などから、極端に食事が制限される疾患です。

INSIGHTIAでは現在、過食・過食嘔吐を主なお悩みとする方を対象としています。神経性やせ症やARFIDについては、初回セッションでご相談の上、必要に応じて専門医療機関へのご紹介を行います。「自分がどの状態に当てはまるかわからない」という段階でも、まずはご相談ください。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト/NHS Eating disorders overview

 
 

④ 思春期の摂食障害

摂食障害は、思春期に最も発症しやすい疾患のひとつです。日本の調査では、摂食障害全体の有病率は1982年の1.18%から2002年には12.7%へと著明に増加しています。さらにコロナ禍の影響により、2020年には2019年比で10代の新規患者数が約1.5倍、2021年には約1.8倍に増加したことが報告されています。

思春期に摂食障害が起きやすい理由

思春期は、こころと身体が急速に変化する時期です。友人関係・学業・外見・家族関係などへの強い不安や、自己コントロール感の喪失を背景に、食のコントロールがこうした不安に対処するひとつの手段になってしまうことがあります。

こんなサインはありませんか?

  • 食事の量や内容への強いこだわりが増している
  • 食後すぐにトイレに立つことが増えた
  • 体重や体型への否定的な発言が増えた
  • 食事の場を避けるようになった
  • 気分の落ち込みや、友人との交流が減った
  • 一人でこっそり食べていることがある

カナダ公衆衛生庁は、「摂食障害を持つ10代の大多数は、家族・友人・専門家のサポートがあれば回復できる」と明記しています。早期に専門家に相談することが、回復への最も確実な一歩です。中学生(12歳)以上の方は、INSIGHTIAにご相談いただけます。保護者の方からのご相談も受け付けています。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト/Public Health Agency of Canada

  
  

放置するとどうなるか

過食・過食嘔吐は、適切なサポートを受けずに放置すると、身体・こころ・生活の両面で深刻な影響が広がっていきます。思春期に発症した場合は、こころと身体の成長そのものにも影響を及ぼすため、早期のサポートが特に重要です。

① 身体への影響

  • 電解質異常(カリウム不足)による不整脈
  • 胃酸による歯の表面の侵食
  • 唾液腺の腫れ
  • 消化器系の障害
  • 慢性的な疲労・脱水

体重が正常範囲内であっても、これらの身体的リスクは進行します。定期的な血液検査や心電図検査が必要な状態になることもあります。

② こころへの影響

過食嘔吐の悪循環が続くことで、うつ病や不安障害を併発するリスクが高まります。自己嫌悪や羞恥心が強まり、「自分はダメだ」という感覚が日常的になっていきます。思春期に放置された場合、自己肯定感の発達そのものに影響することがあります。

③ 生活・学業への影響

過食に費やす時間・お金・エネルギーが増え、仕事や学業、人間関係に支障が出ることがあります。思春期の場合、学校生活や友人関係への影響が特に大きく、不登校や社会的孤立につながることもあります。

④ 悪循環の慢性化

サポートなしに過食嘔吐をやめようとすると、強い反動が生じ、かえって症状が悪化することがあります。一人でやめようと頑張れば頑張るほど、自己嫌悪が深まるというパターンに陥りやすいです。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト/NHS Eating disorders overview/Public Health Agency of Canada

  
  

治療法と根拠

過食・過食嘔吐には、エビデンス(科学的根拠)のある治療法が存在します。

 

① 認知行動療法(CBT-E)

過食・過食嘔吐に最も効果が示されている心理療法は、摂食障害に特化した認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy-Enhanced: CBT-E)です。CBT-Eは、過食嘔吐という症状そのものだけでなく、その背景にあるボディイメージへのとらわれ、自己評価の低さ、完全主義、感情との関係などに総合的に取り組む治療法です。

国立精神・神経医療研究センターは、CBT-Eについて「神経性過食症のむちゃ食いや過食嘔吐を減らすための心理療法として効果が検証されている」と明記しています。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト/Fairburn CG et al. (2009). Transdiagnostic cognitive-behavioral therapy for patients with eating disorders: a two-site trial with 60-week follow-up. American Journal of Psychiatry, 166, 311-319

② 食事の規則化から始める

「まず過食ゼロを目指す」のではなく、食事の規則性とコントロール感を取り戻すことが治療の出発点です。過食以外がほとんど絶食の状態で過食をやめようとすることは、かえって過食を引き起こしやすくなります。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト

③ 薬物療法との関係

抗うつ薬(SSRI)が過食嘔吐の症状を一時的に和らげる場合があります。ただし薬物療法だけでは問題の根本的な解決にはつながりにくく、CBT-Eとの併用が推奨されています。薬の処方については、精神科・心療内科の医師にご相談ください。INSIGHTIAでは処方を行っておりません。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト

  
  

INSIGHTIAの特徴

① CBT-Eの専門的なセッションを個別に提供

INSIGHTIAでは、摂食障害に特化した認知行動療法(CBT-E)を、個別セッション形式で提供しています。CBT-Eは、過食嘔吐という症状だけでなく、その背景にあるボディイメージへのとらわれ、自己評価、完全主義、感情との関係など、その方固有の維持要因に総合的に取り組む治療法です。一人ひとりの状況に合わせて、セッションを進めていきます。

② 熟練専門家によるスーパービジョンを継続受講

セッションの質を継続的に確認・向上させるため、摂食障害治療の熟練専門家によるスーパービジョンを定期的に受けています。

③ 日本で数少ないCBT-Eを提供できる機関のひとつ

摂食障害に特化したCBT-Eを提供できる専門機関は、日本ではまだ限られています。国立精神・神経医療研究センターも、CBT-Eは「主に海外で開発されてきたもので、日本では必ずしも一般的ではない」と指摘しています。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト

  
  

摂食障害の認知行動療法(CBT-E)セッションの流れ

セッションは、以下のステップで進みます。無理に進めることはなく、毎回あなたのペースに合わせて行います。

1

初回セッション(アセスメント)

現在の食行動、生活への影響、これまでの経緯をお聞きします。過食嘔吐の頻度や状況だけでなく、食事・体重・体型に対するお気持ちや、生活全体についても一緒に整理します。

2

心理教育と食事の記録

CBT-Eのしくみと、過食嘔吐がなぜ続くのかをご説明します。その上で、食事の記録(食事日誌)を始めます。「何を食べたか」ではなく、「いつ・何を・どのような状況で食べたか」を記録することで、自分のパターンへの気づきが生まれます。

3

食事の規則化

「過食ゼロ」を最初の目標にするのではなく、まず食事のリズムを整えることから始めます。1日の食事と間食のタイミングを決め、規則的な食事パターンを少しずつ取り戻していきます。

4

維持要因への取り組み

過食嘔吐の背景にある要因、例えばボディイメージへのとらわれ、完全主義、自己評価の低さ、感情との関係などに、個別に取り組んでいきます。症状だけでなく、その人固有の「悪循環のしくみ」を一緒に解きほぐしていきます。

5

終結と再発予防

症状が安定し、自分で対処できるようになったら、セッションの終結を検討します。将来の困難な場面への対処法も含め、再発予防の計画を一緒に立てます。

セッション回数の目安:週1〜2回のセッションで、おおよそ20回程度が一般的です。症状が重い方は40回程度が標準的です。

出典:国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト/Fairburn CG et al. (2009). Transdiagnostic cognitive-behavioral therapy for patients with eating disorders: a two-site trial with 60-week follow-up. American Journal of Psychiatry, 166, 311-319

よくある質問

Q1. カウンセリングと精神科・心療内科、どちらに行けばいいですか?

どちらか一方ではなく、併用をお勧めするケースが多いです。

精神科・心療内科では、診断と薬の処方が受けられます。抗うつ薬(SSRI)が過食嘔吐の症状を一時的に和らげる場合があり、薬によって症状が落ち着いた状態でCBT-Eに取り組むと、セッションが進めやすくなることがあります。

INSIGHTIAでは、摂食障害に特化した認知行動療法(CBT-E)のセッションを提供しています。すでに医療機関に通われている方も、そうでない方も、まずはご相談ください。医療機関へのご紹介が必要な場合は、一緒に検討します。

なお、診断を行うのは医師のみです。INSIGHTIAでは診断は行っておりません。ただし、診断の補助となる心理検査を実施し、検査結果をまとめた資料を医療機関にご提出いただくことができます。

Q2. 過食をやめたいのですが、最初から食事制限も指導されますか?

食事制限の指導は行いません。

CBT-Eでは、むしろ逆のアプローチをとります。過食の背景には、極端な食事制限や食事の抜きが関係していることが多いためです。「食べてはいけない」という強いルールが、かえって過食を引き起こす悪循環につながっています。

そのため、最初のステップは「食事を減らすこと」ではなく、「1日の食事と間食のタイミングを整えること」です。何を食べるかよりも、いつ食べるかのリズムを取り戻すことから始めます。

「食べることへの罪悪感をなくしたい」「食事を怖いと感じなくなりたい」という気持ちも、セッションの中で一緒に取り組んでいきます。

Q3. 体重を測ることはありますか?

はい、セッションの中で体重を確認します。

CBT-Eでは、週に1回、セッションの中で体重を測定します。体重を「減らすこと」を目標にするのではありません。体重の数字に一喜一憂せず、客観的なデータとして自分の状態を把握することが目的です。

体重測定に強い不安や恐怖を感じている方も多くいらっしゃいます。その気持ちはセッションの中で丁寧に扱っていきます。まずは初回セッションでご状況をお聞かせください。

Q4. 家族も一緒にセッションに参加できますか?

基本的には、ご本人のみを対象とした個別セッションです。

ただし、状況によっては、ご家族への情報提供や、ご家族を交えたセッションをご提案する場合があります。特に中学生・高校生の方の場合、保護者の方のご理解とサポートが回復に大きく影響することがあります。

保護者の方からのご相談も受け付けています。「子どもにどう関わればよいか」「どのように専門家につなげればよいか」といったご相談も歓迎しています。まずはお気軽にお問い合わせください。

Q5. オンラインでもセッションを受けられますか?

はい、対応しています。

INSIGHTIAでは、対面セッションに加え、オンラインでのセッションも受け付けています。国内在住の方はもちろん、海外在住の方もご利用いただけます。

CBT-Eのセッションはオンラインでも対面と同様に進めることができます。食事日誌の記録や体重測定など、日常生活の中で取り組む課題も、ご自宅の環境を活用して行うことができます。

Q6. 自分が摂食障害かどうかわからない段階でも相談できますか?

はい、むしろそのような段階でご相談いただくことが大切です。

「これは摂食障害なのか、それとも意志が弱いだけなのか」と迷っている方は多くいらっしゃいます。過食・過食嘔吐は、症状の程度や頻度に幅があり、自分では「病気というほどではない」と感じていても、専門家の視点からは早めのサポートが必要な状態であることも少なくありません。

初回セッションでは、現在の状況をお聞きしながら、症状の見立てを一緒に行います。その上で、CBT-Eが適切かどうか、他の専門機関へのご紹介が必要かどうかも含めてご提案します。「もしかして」という段階でも、ぜひご相談ください。

Q7. 子どもでも受けられますか?

中学生(12歳)以上の方を対象としています。

摂食障害は思春期に発症しやすい疾患です。CBT-Eは12歳以上を対象とした思春期版が開発されており、中学生以上であれば本人の意思でセッションに取り組むことが可能と判断し、お受けしています。

小学生以下のお子さんについては、申し訳ございませんが現在対応しておりません。児童専門の医療機関や相談機関へのご紹介をお勧めします。

保護者の方からのご相談も受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。

Q8. 英語でのセッションは受けられますか?

はい、日本語・英語どちらでもセッションを受けていただけます。

INSIGHTIAでは、日本語と英語の両方でCBT-Eのセッションを提供しています。在日外国人の方、英語でのセッションを希望される日本人の方、どちらもお受けしています。初回のお問い合わせも、日本語・英語どちらでも構いません。お気軽にご連絡ください。

「もしかして」と思ったら、まずご相談ください。

過食・過食嘔吐は、適切なサポートで回復が期待できる疾患です。一人で抱え込まず、まずご相談ください。

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